VOICES アスリートの声
YAMAMOTO Kenichi 山本 健一
2026年上半期を振り返って
① スウェーデン遠征2月25日~3月6日
伝統の「バーサロペット」出場
第102回目を迎える、世界最古のクロスカントリースキーレース。距離90㎞、クラシカルテクニック。参加人数14,500人。他のカテゴリも合わせると3万人にものぼる、世界最長距離、最大規模のイベント。国内はもちろん世界各地から集まった老若男女が滑ります。かつて初代国王バーサが逃亡したルート、セーレンからムーラまでワンウェイのコースです。
補給計画
レースでは、90㎞を6時間~7時間で完走予想で、1時間当たり300kcalとして最初の1時間半はスタート前のエネルギーで補えるので、レースで必要なカロリーは多く見積もって6時間分。つまり1800kcal。飲んDECOを3つ(300kcal×5=1500kcal)を1.5Lのハイドレーションに溶かしました。けっこう濃いめです(笑)。事前にこの濃さでテストしていましたので大丈夫でした。いきなりだときついかもしれませんね。あとはハニーアクションジェル(80kcal×3=240kcal)を持ちました。もし足りなかったらエイドもありますのでそこでジェルをもらえばいいかなという作戦です。
ハイレベルな北欧のみなさん
今回は渋滞や、コースカッターの消失など、なかなか厳しいコンディションでしたが日本では経験できないことたくさんありました。驚いたことは、年配の方々がとても速いということ。こちらも全力で滑っているのに、普通に後ろから越されていきます。一般市民のレベルの高さ、スキー文化が根付いている一面を体験しました。また、この盛り上がりは、本当に気持ち良いです。街というか国がこのイベントをみんな認知していて、「バーサロペットのために来た」と話をすると、必ず「すごい!がんばって!」とか「90㎞も走るの!?アメイジング!」という走る人たちを励ましたり、リスペクトしたり、声をかけてくれます。自分たちが英雄になった感じ(笑)。でもこれはシャモニでUTMBを走る選手、クールマイユールでトルデジアンを走る選手、レユニオン島でディアゴナルデフォを走る選手、アンバウンドグラベルでXLを走る選手に対して、どこの地域でも必ず同じような反応をされます。地域にその大会の文化が根付いていますね。住民がみんな大会のすごさを知っている。日本でもいつかそんな風になればいいと思います。
結果
私は6000番台のスタート位置で、フィニッシュは7時間30分で2974位でした。上位に入るには何年かかけて実績を作り、スタート位置を前のほうにしていく必要があります。
② アメリカ遠征5月25日~6月2日
世界最高峰のグラベルレース「アンバウンドグラベル」参戦
昨年に引き続き今年も参加しました。様々なカテゴリーがある中で、最長クラスの「XL=360マイル=575㎞」への参加です。昨年は24時間55分で完走しましたが、あまり泥だらけになることができませんでしたので今年こそは…という思いで再び来てしまいました。天気予報は「曇り時々雷雨」。完璧です。これはどろんこ祭りになるかもしれない…
グラベルの街・エンポリア
エンポリアはグラベル発祥の地であるためかグラベルライダーのためのサイクリングパーキングなど、無料で停められるところがほとんどです。イベント期間中は街の中心部は特設会場となり、車は通行止めです。街全体がイベントのために動いています。
装備
昨年との違い、というかアップデートがいくつかあります。
〇ホイールをカーボンに換えた
〇エアロバーを装着
〇途中のショップでの休憩時間を15分以内(昨年はもたもたしていて結構長くかかった)
〇ショップでの買い物は水のみ(すべて持参する)
〇最初からある程度のペースで走る(昨年は心配でスロースタートで発進した)
〇ヘッドランプは初めからメットにつけておく
これらの対策で、昨年と同じコンディションであれば1時間半~2時間は短縮できると考えていました。
食糧計画
食糧計画は昨年のを参考に、無理しない感じで多めに持ちました。経験上1時間に220kcalで十分に動けます。(トレイルランの場合は300kcal)これは人それぞれ違います。それをもとに立ち寄る予定のショップまでの時間を出して、小分けにしました。今回は第1エイド175㎞、第2エイド257㎞、第3エイド437㎞で補給する計画。4つのセクションです。第2と第3の間が180㎞あるので少し不安ですが、山での行動時間を考えれば、経験はありますので大丈夫、という結論になりました。エネルギー源は、ハニーアクションの「飲んDECO」(1パック300kcal)をフラスクに必要な数量溶かします。基本的に2パックを500mlに溶かします。結構濃いめです(笑)。事前に濃さのテストが必要です。私は大丈夫でした。あとはパサパサになる覚悟でカロリーメイト。軽くて高カロリー美味しい。非常食として、ハニーアクション(1パック80kcal)を5本、アンサー600(1パック600kcal)、飴で1000kcalちょっと持ちましたので何かあっても+5時間近くは動ける計算になります。今回は悪天候なのでこの非常食がかなり重要です。アミノ酸は2時間おきにベスパハイパー、電解質は塩熱サプリを1時間おきに一粒摂取。これを切らさなければ、必ず動き続けられます。
いざ砂利の高速道路へ
15:00スタート。日本人は私たち二人だけ。スタートリストをみると昨年より100名多い310名ほどがエントリーしています。スタート後数分走るとすぐにグラベルに入ります。すごい砂埃。私は中間位に位置取りました。乾いている…。そしてカンザスの高速グラベルが始まりました。時速35~40㎞は軽く出ます。砂を飲み込みながらの走りです。気持ち良すぎです。日本では味わえません。
順調に進んでいたレースも午前2時動き出します。予報通り雷雨がやってきました。2時間ほど続きます。その後、いよいよやってきました。アンバウンドグラベル名物、「ピーナッツバター」これは超粘土質の泥です。タイヤをその泥に着けようものなら、泥が雪だるまのようにくっつき、タイヤが大きくなり、動かなくなります。そしてスタート前日にエキスポで配られる木のヘラでその泥を掻き出すのです。5時間、ピーナッツバターの強烈なアトラクションで楽しみました(笑)。その距離約15㎞。楽しかったですが、体力は消耗しました。予定より時間はかかっていましたが、非常食をとりながらその区間は乗り切りました。ラスト145㎞は左足の内側広筋が痛み出し、それが膝に響いて少しきつかったですが、ラスト40㎞地点で昨年の記憶がよみがえり、あーもう終わってしまうな、と思い、さみしくなりました。
帰還
午後7時半、いよいよエンポリアに戻ってきました。まだ明るいです。写真とか撮れるしそれだけでうれしいですね。あっという間の28時間45分。17位でのフィニッシュ。いろいろと地元の方が話しかけてくれます。いい時間です。この時間が大好きです。日本の仲間や家族にも電話したり、実にいい時間です。
しかし、今年はゴール後の様子がおかしいことに気づきます。ジャンクフード祭りをしようと決めていたのに、何も喉を通らない!逆に気持ち悪くなり吐きそう。しばらく座って横になり様子をみます。完全にやられている。体をふいて、着替えて、自転車を洗ってもらって5時間たってもまだ気持ち悪い。少し横になる。6時間経過。やっとスポーツドリンクが喉を通る。こりゃ珍しく内臓も疲れている。相当追い込みましたね。
まとめ
飲んDECOを中心に走り切ることができました。このリキッドの素晴らしいところは、高カロリーなのに飲みやすいところ。レースの特徴に応じた、自分のエネルギー消費量と好みの濃度を見つけて、効率のよいエネルギー摂取を目指していきましょう!